今回は、電気工事・電気通信工事の現場でメンバーからリーダーへ成長する際に、技術力だけでなく「判断の質」「人との関わり方」「物事の捉え方」が重要になる理由をお伝えします。
株式会社アクトが実際の人材育成で大切にしている考え方をご紹介します。
代表の佐々木です。
社員の成長について考えていると、
「メンバーとして仕事ができること」と、
「リーダーとして仕事ができること」は、
同じ延長線上にあるようで、実は求められるものが少し変わってくると感じています。
もちろん、リーダーになるためにも技術力は必要です。
電気工事や電気通信工事の現場では、安全に作業できること、施工内容を理解していること、必要な資格や知識を身につけることは大前提です。
しかし、
「技術力の高い人が、そのまま良いリーダーになるのか」
というと、必ずしもそれだけではありません。
なぜなら、メンバーの頃は主に、
「自分がどう仕事をするか」
を考えればよかったものが、
リーダーになると、
「チームとしてどう仕事をするか」
を考えなければならなくなるからです。
自分ならできる。
自分なら分かる。
自分なら忘れない。
自分ならその判断をする。
それだけでは、チームは動きません。
人に伝える。
人に任せる。
確認する。
相談を受ける。
安全を守る。
品質を守る。
時には指摘する。
元請会社やお客様とも調整する。
そして、自分とは違う考え方を持った人たちと一緒に成果を出す。
ここから、仕事の難しさが変わってきます。
だからアクトでは、メンバーからリーダーへの成長を、
単純に「技術力が上がったから昇格する」ということだけでは捉えていません。
技術的な成長に加えて、
「判断の質」
「人との関わり方」
「物事の捉え方」
まで成長していくことが大切だと考えています。
メンバーの成長とリーダーの成長は何が違うのか
現在、アクトにはメンバークラスの社員が多く在籍しています。
メンバークラスの時期には、まず自分自身の仕事をしっかり覚えることが重要です。
安全ルールを知る。
道具を扱えるようになる。
施工方法を覚える。
必要な資格を取得する。
指示された内容を理解する。
一人でできる仕事を増やす。
品質を守る。
報告できるようになる。
アクトでは、こうした成長を、
「知る」
「分かる」
「行う」
「出来る」
「分かち合う」
という段階で考えています。
最初は知らなかったことを知る。
意味が分かる。
実際に行う。
一人でも出来るようになる。
そして、自分が身につけたものを周囲へ分かち合えるようになる。
この最後の「分かち合う」あたりから、少しずつリーダーとしての役割が見えてきます。
なぜなら、自分だけができればいい世界から、
「自分が持っているものを、人へ渡す」
という世界へ変わるからです。
リーダーになると「自分ならできる」が通用しなくなる
仕事ができる人ほど、
「自分でやった方が早い」
と思う場面があると思います。
私自身も経営をしていて、その感覚はよく分かります。
自分が知っている仕事であれば、自分で判断して、自分でやってしまった方が早い。
しかし、それを続けていると、いつまで経っても次の人が育ちません。
リーダーも同じです。
メンバーが作業しているのを見て、
「遅いな」
「自分ならもっと早くできるのに」
「なんで分からないんだろう」
と思うことがあるかもしれません。
でも、そこで全部自分がやってしまったら、その瞬間の仕事は早く終わっても、メンバーの経験は増えません。
短期的には効率的でも、
長期的に見たら効果的ではない場合があります。
リーダーになるということは、
「自分が一番仕事をする」
ことだけではなく、
「チームとして成果を出せる状態をつくる」
ことでもあると思っています。
人は、自分の思い通りには動かない
そして、リーダーになると必ず向き合うことがあります。
それが、
「人は自分の思い通りには動かない」
ということです。
自分は一度言われたら覚えられた。
でも、相手は何度か経験しないと覚えられない。
自分は細かいところまで気になる。
でも、相手はまだそこまで見えていない。
自分は急いでいる。
でも、相手は同じスピードでは動けない。
自分にとっての当たり前が、相手にとっての当たり前ではない。
リーダーになると、このような場面が一気に増えてきます。
ここで、
「なんでできないんだ」
「普通は分かるだろう」
「何度言えば分かるんだ」
と考え続けてしまうと、リーダー自身も苦しくなります。
そして、その感情が言葉や態度に出れば、メンバーとの関係にも影響します。
だから私は、リーダークラスになればなるほど、
「物事をどう捉えるか」
が重要になってくると思っています。
コントロールできないものを、コントロールしようとしない
アクトのリーダー育成で、今後さらに伝えていきたい考え方の一つがあります。
それは、
「自分が直接コントロールできるのは、自分の思考と行為である」
という考え方です。
他人が何を考えるか。
他人がどう感じるか。
過去に何が起きたか。
相手が最終的にどんな行動を選択するか。
こうしたことを、自分が完全にコントロールすることはできません。
リーダーだからといって、メンバーを自分の思い通りに動かせるわけではありません。
しかし、
自分がどう考えるか。
どう伝えるか。
どのような指示を出すか。
どこまで説明するか。
どんな仕事を任せるか。
どう確認するか。
どうフィードバックするか。
誰に相談するか。
次にどんな行動を取るか。
ここは、自分が選択できます。
だから、思い通りにならない相手に対してイライラし続けるよりも、
「では、自分にできることは何だろう」
と考える。
私は、この思考がリーダーには非常に重要だと思っています。
これは「全部自分が悪い」と考えることではない
アクトでは、
「自責で考える」
ことも大切にしています。
ただし、自責という言葉を、
「何でも自分が悪いと思うこと」
にはしたくありません。
相手に問題があることもあります。
元請会社から届いた情報が不足していることもあります。
メンバーがルールを守っていないこともあります。
自分ではどうにもできない外部要因もあります。
事実は、事実として見る必要があります。
そのうえで、
「相手が悪いから終わり」
ではなく、
「この状況の中で、自分は何ができるか」
へ進む。
問題が起きた。
原因を考える。
自分が影響を与えられる部分を探す。
具体的な次の行動を決める。
そして実行する。
アクトでは、
「自責 → 原因分析 → ネクストアクション → 実行」
という流れを大切にしています。
リーダーになれば、この考え方はさらに重要になると思っています。
「何々します」と言うだけでは仕事は変わらない
私は社員との面談や仕事の中で、
「今後は気をつけます」
「次から頑張ります」
「改善します」
という言葉だけで終わらせないようにしています。
以前から私は、
「言葉だけなら、まだ音に過ぎない」
と考えています。
大切なのは、
「では、具体的に何をするのか」
です。
例えば、
「メンバーとのコミュニケーションを改善します」
では、まだ行動が見えません。
毎朝、作業前に今日の役割を確認する。
作業終了後に5分だけ振り返る。
指示を出したら、相手がどう理解したか確認する。
困っている様子があれば、こちらから一度声をかける。
こうなれば実行できます。
リーダー育成でも、
「良いリーダーになりましょう」
ではなく、
「明日から何をするのか」
まで落とし込むことが大切です。
リーダーには「厳しさ」も必要
人間関係を大切にするという話をすると、
「では、メンバーに厳しいことを言ってはいけないのか」
と思われるかもしれません。
私は、そうは考えていません。
安全ルールを守っていない。
決められたことを実行していない。
品質基準を満たしていない。
お客様との約束を守っていない。
こうしたことがあれば、必要な指摘はしなければなりません。
リーダーが、
「嫌われたくないから言わない」
となってしまえば、チームのためにも本人のためにもならない場合があります。
ただし、
厳しく伝えることと、理不尽に伝えることは違います。
相手を否定する。
感情をぶつける。
自分のイライラを解消するために強く言う。
それは、私が考える指導とは違います。
大切なのは、
「何のために伝えるのか」
です。
安全のため。
品質のため。
お客様のため。
そして、その本人の成長のため。
目的が「相手を良くすること」であれば、伝え方も変わってくると思います。
良好な人間関係とは「何も言わない関係」ではない
アクトでは、
「良好な人間関係 × 高業績」
という状態を大切にしています。
良好な人間関係とは、
仲が良いだけの組織ではありません。
何をしても許される。
間違っていても指摘しない。
期限を守らなくても何も言わない。
安全ルールを守らなくても見て見ぬふりをする。
それでは、高い成果を出すチームにはならないと思っています。
本当に相手の成長を考えているのであれば、必要なことは伝える。
ただし、人格を否定する必要はありません。
事実を見る。
行動を見る。
何が問題だったのか考える。
次にどうするのか一緒に考える。
そして、また実行する。
私は、こうした関係の方が長期的には良い人間関係につながると思っています。
リーダー自身にもケアが必要
ここは、経営者として最近特に重要だと感じています。
リーダーは、メンバーを支える側です。
しかし、
「支える側だから、リーダーは大丈夫」
ではありません。
むしろリーダーになると、
現場の安全。
品質。
進捗。
元請会社との調整。
メンバーへの指示。
メンバーの育成。
さまざまなことを考えるようになります。
自分の理想と現実とのギャップも見えやすくなります。
その結果、ストレスがたまることもあります。
だからアクトでは、リーダークラスについても、私やマネージャークラスが支援していくことが必要だと考えています。
「最近どうなのか」
「何に困っているのか」
「その問題の中で、自分がコントロールできる部分はどこなのか」
「別の捉え方はできないか」
「次にどんな行動ができるか」
そういったことを一緒に整理する。
リーダーだから放っておくのではなく、
リーダーにも成長するための支援が必要です。
なぜ会社が「物事の捉え方」まで伝えるのか
ここまで会社が考える必要があるのか。
そう思う人もいるかもしれません。
私は、必要だと思っています。
なぜなら、仕事をしている時間も、その人の人生だからです。
一日の仕事の中で、
ずっとイライラしている。
他人の行動ばかり気になっている。
変えられない過去について考え続けている。
元請会社への不満だけを抱えている。
メンバーが思い通りに動かないことに苦しんでいる。
そんな状態で仕事を続けることが、その人自身の人生の質の向上につながるとは、私は考えていません。
会社のために感情を我慢してほしい、という話ではありません。
その人自身が、
「自分は何を選択できるのか」
を知ってほしい。
変えられないものと、変えられるものを区分できるようになってほしい。
自分が影響を与えられることへエネルギーを使えるようになってほしい。
これは会社の業績だけの話ではなく、その人自身にとっても価値があることだと思っています。
社員には仕事を通じて、自分の人生を豊かにしてほしい
私は、アクトで働く社員には、
「アクトのためだけに成長してほしい」
とは思っていません。
仕事を通じて成長し、
その結果として、
本人自身の人生を豊かにしてほしい。
技術を身につける。
資格を取得する。
収入を増やす。
判断できることを増やす。
人との関わり方を学ぶ。
リーダーシップを学ぶ。
時間の使い方を考える。
お金の使い方を考える。
物事の捉え方を増やす。
自分ができることを増やす。
そうすれば、人生の選択肢も増えていくと思っています。
私は経営者として、
社員の人生を決めることはできませんし、決めるべきでもありません。
ただ、
「選択肢を増やすための情報と機会を提供する」
ことはできると思っています。
それも、人を雇用する会社としての大切な役割だと考えています。
メンバーからリーダーへ。成長の軸が変わっていく
アクトの人材育成を整理すると、メンバーからリーダーへ進むにつれて、少しずつ成長の軸が変わっていきます。
メンバーの段階では、
自分の仕事を覚える。
安全に作業する。
技術を身につける。
資格を取得する。
指示された仕事を正しく実行する。
一人でできることを増やす。
ここが重要です。
そこからリーダーへ近づいていくと、
自分ができるだけではなく、
人へ伝える。
人に任せる。
人の力を借りる。
チームで成果を出す。
安全と品質について判断する。
必要なことをフィードバックする。
そして、
「自分の思考と行為を、自分で選択する」
という力が重要になってきます。
さらにマネージャーになれば、
自分が成果を出すだけではなく、
人の目標達成を支援する。
リーダーを育てる。
次の人材を排出する。
という役割へ変わっていきます。
私は、このように役割が変わるごとに、
「何を成長させる必要があるのか」
も変わっていくと考えています。
技術的に卓越した先に、どんな人になってほしいのか
電気工事会社ですから、技術力は当然大切です。
安全に施工できる。
品質の高い仕事ができる。
現場を理解している。
必要な資格を持っている。
これは、これからも変わりません。
しかし、その先に、
「周りから一緒に仕事をしたいと思われる人」
になってほしいと思っています。
困ったときに相談できる。
必要なことをきちんと伝えてくれる。
感情だけで判断しない。
問題が起きたら解決へ向かって動く。
自分一人で抱え込まず、人の力を借りられる。
メンバーの成長を喜べる。
お客様のことを考えられる。
そして、自分自身の人生も大切にできる。
私は、こういう人が増えていけば、会社は自然と強くなっていくと思っています。
「建設業のカラーを変える」は、人の育ち方から
アクトは、
「建設業のカラーを変える」
というビジョンを掲げています。
私は、このビジョンを実現するためには、
新しい技術を導入することや、働き方を変えることだけでは足りないと思っています。
人の育ち方も変えていく必要があります。
昔ながらの、
「見て覚えろ」
だけではなく、
なぜそうするのかを伝える。
基準を見えるようにする。
挑戦する機会をつくる。
任せる。
フィードバックする。
また挑戦してもらう。
そして技術だけではなく、
判断の質。
人との関わり方。
物事の捉え方。
リーダーシップ。
こうした部分まで成長できる会社にしていく。
私は、それも「建設業のカラーを変える」ということだと思っています。
良いリーダーを増やすことは、良い現場を増やすこと
会社の理念や制度がどれだけ良くても、
毎日の現場でメンバーと一番長く接するのはリーダーです。
リーダーが安全を大切にすれば、チームの安全意識にも影響します。
リーダーが品質に妥協しなければ、チームの品質基準にも影響します。
リーダーがメンバーへ丁寧に伝えれば、次の人もその伝え方を覚えていきます。
反対に、
リーダーが感情だけで人へ接すれば、それもチームへ影響します。
だから私は、
「良いリーダーを育てること」は、
単なる人事制度の話ではなく、
「良い現場を増やすこと」
そのものだと思っています。
会社が人を育て、人が会社を育てる
メンバーが成長する。
リーダーになる。
リーダーがメンバーを育てる。
マネージャーがリーダーとメンバーの成長を支援する。
育った人が、次の人へ自分の経験を分かち合う。
そうすると、
社長一人が全員を育てる会社ではなくなります。
「人が人を育てる会社」
へ変わっていきます。
私は、その状態を目指しています。
そして最終的には、
社長がその場にいなくても、
会社として大切にしている基準をもとに、
それぞれが正しい判断をできる組織にしたい。
そのために必要なのは、
技術だけではありません。
判断する力。
人と関わる力。
自分自身を整える力。
そして、
「自分が今できることは何か」
と考え、実行する力です。
リーダーになることは「偉くなること」ではない
私は、リーダーという役割を、
「偉くなること」
だとは考えていません。
責任の範囲が広がることだと思っています。
自分だけではなく、チームの安全を見る。
自分だけではなく、チームの品質を見る。
自分だけではなく、メンバーの成長にも関わる。
そして、
自分一人の力ではなく、
人の力を借りながら成果をつくる。
だから難しい。
でも、その分、
人として成長できる役割でもあると思います。
技術を身につけることから始まり、
自分でできるようになり、
次の人へ分かち合い、
人と一緒に成果をつくれるようになる。
その成長を会社として支援していきたいと思っています。
人が育てば、組織は変わる。
組織が変われば、お客様へ届けられる価値が変わる。
その価値が、建設業の未来を変えていく。
私たちアクトは、技術だけではなく、判断の質や人との関わり方まで含めて人を育てることで、より良い現場を増やし、日本の通信・電気・インフラを支える力を高め続けます。
今回は前回の「仕組み化」の次の記事として読んでも、仕組みをつくる → リーダーを通して育成する → では、そのリーダー自身には何が必要なのかと自然につながるテーマにしています。