「建設業は見て覚える仕事。」
そんな言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
確かに、現場でしか学べないことは数多くあります。
工具の使い方。
現場ごとの判断。
職人同士の連携。
図面だけでは学べない感覚。
これは実際に現場へ出て経験するからこそ身につく技術です。
しかし私は、それだけでは人は育たないと考えています。
なぜなら、私自身がそうだったからです。
私は中卒で建設業界へ入りました。
当時は何を覚えればいいのか分かりませんでした。
怒られながら仕事を覚える。
先輩の背中を見ながら技術を盗む。
それが当たり前でした。
もちろん、その環境で学べたこともたくさんあります。
責任感。
現場の厳しさ。
仕事に対する覚悟。
それらは今の自分をつくってくれた大切な経験です。
しかし一方で、
「もっと分かりやすく成長できる環境があれば、もっと早く成長できたのではないか。」
そんな思いもずっと持っていました。
会社を経営するようになってからも、最初から育成がうまくいっていたわけではありません。
新人へ仕事を教えても、教える人によって内容が違う。
何を覚えれば一人前なのかが曖昧。
評価する基準も人によって変わる。
結果として、
頑張っている社員ほど、
「次は何を目指せばいいんですか?」
という不安を抱えていました。
私は経営者として、その状況を変えたいと思いました。
そこで作ったのが、ACT人材開発モデルです。
これは単なる評価制度ではありません。
人を評価するためではなく、人を育てるための仕組みです。
私たちはG5メンバーグレードを五つのレベルに分けています。
「知る」
「分かる」
「行う」
「出来る」
「分かち合う」
この五段階には、一つひとつ意味があります。
最初は「知る」。
会社の理念。
安全ルール。
工具。
材料。
現場で働くために必要な基礎を学びます。
次に「分かる」。
なぜその安全ルールが必要なのか。
なぜその施工方法を選ぶのか。
ただ教わるだけではなく、理由まで理解します。
そして「行う」。
知識を現場で実践します。
私たちが最も大切にしている「実行」がここにあります。
知っているだけでは価値になりません。
理解しているだけでも価値になりません。
実際に行動へ移して初めて、自分の力になります。
さらに「出来る」。
教わらなくても、安全と品質を守りながら施工できる状態です。
そして最後が「分かち合う」。
ここがアクトらしい考え方だと思っています。
技術は自分だけが持っていても組織は強くなりません。
後輩へ伝える。
仲間を支える。
チームワークを高める。
リーダーシップを身につける。
人との関わり方を学ぶ。
教養を身につける。
この段階まで成長して初めて、職長になる準備が整います。
つまり、技術だけでは次のステージへは進めません。
人としての成長も求めています。
実際に今年六月、半期に一度の評価査定と、次の半期に向けた目標設定を実施しました。
その結果、約九割の社員が昇格・昇給となりました。
もちろん、甘い評価をしたわけではありません。
技術習得チェックリストをもとに、一人ひとりの実行を確認した結果です。
評価シートを見返していて感じたのは、社員の成長速度でした。
半年という期間で、
できることが増えている。
任せられる仕事が増えている。
安全への意識が高まっている。
そして、お客様の立場で物事を考える発言が増えている。
私はこの変化を見て、改めて思いました。
人は、成長の道筋が見えると伸びる。
何を目指せばいいのかが明確になると、人は挑戦できる。
だからこそ、育成には仕組みが必要なのです。
以前、未経験で面接へ来られた方から、こんな言葉をいただきました。
「現場へ出る前に研修があると聞いて安心しました。」
私にとって、この言葉はとても印象的でした。
建設業界では、
「現場で覚えればいい。」
という考え方もあります。
しかし未経験者からすると、
工具も分からない。
材料も分からない。
専門用語も分からない。
そんな状態で現場へ出ることは、大きな不安です。
だから私たちは、現場へ出る前に研修を行います。
安全を学ぶ。
会社の考え方を学ぶ。
評価制度を知る。
技術を学ぶ。
何を目指せばいいのかを理解する。
その上で現場へ出ます。
これは決して甘やかしているわけではありません。
安心して挑戦できる環境を整えることが、結果として成長につながると考えているからです。
私は、建設業界はもっと人が育つ業界になれると思っています。
技術だけを教える時代ではありません。
人を育てる時代です。
人が育てば、組織が成長する。
組織が成長すれば、お客様へ提供できる価値も高まる。
その積み重ねが、建設業界全体の未来を変えていくと私は信じています。
ACT人材開発モデルは、まだ完成形ではありません。
社員と共に改善を続けながら、より良い仕組みへ進化させていきます。
しかし一つだけ変わらないことがあります。
それは、
「人の成長なくして、組織の成長なし。」
この考え方です。
私たちはこれからも、一人ひとりの成長を本気で支えられる組織であり続けたいと思います。